2024/11/28

「Snow Breaker」ライナーノーツ

  弦央昭良が「Brick Geist」名義でリリースした曲。ソロプロジェクト的概念ではなく、もっと自分そのもの。

・この曲ではリズムセクションをアナログシンセで構成した。チャンレジだったが、“弾力感”のある面白い仕上がりに。アナログなので音が太く荒れた音。いい暴れ具合で、スノーモービルの疾走感につながった。

・実はこのドラムセクション、4音鳴っているが2パートしかない。バスドラムと高音シンドラはmoog mother-32で、スネアとハイハットはベリンガーSystem100。どちらも音程を変えるだけで各々2パート分の音を担当。ただしグルーブやダイナミクスはないベタ打ち。

・打ち込みだけではノリを出すのに限界があるので、この曲ではエレピリフを手弾きで入れている。これだけで自然なグループ感が出る。テクノポップといえど手弾きは活用したほうが良い結果が出る、と思う。

・他パートはハードシンセFA-06とSH-4dで担っている。最近の自分の曲は特に、なかなかソフトシンセは登場しない。ただ重要パートをMassiveで出しています。ハマる時はソフトシンセもハマるが、今度はミックスで馴染ませる処理が必要になる。

2024/11/22

MIXにおけるサミング(バス)の問題

  ミキシングしてて意外なことに気付いた。DAWによって違いが出てくるだろうから、一応ProToolsの場合としておきますが。
 マルチトラックをミックスダウンする場合、例えばストリングス、ドラム……といった具合に、楽器の種類ごとにステムを作って音量を調整する手法がありますね。ドラムなら、キック、スネア、ハイハット……と各楽器を集めたバスを作って(ドラムバス)、これをまたマスターに流すって形式。ウチも迷わずそうしていますが、音量調整が非常にやりやすくなります。

 ところが、例によってアナログシンセの多重録音で5声のパートを録音して、声部ごと2回重ねて合計10トラック。これをステムにしてバスに通していたんですね。パートの一体感を出すためにバスコンプを入れたり外したりして効果を試していましたが、ふと、バスを作らず各パートを直接マスターアウトに流したら、音が変化するか試したくなった。
 結果びっくりですが、実際に各トラックの分離が良くなり、音が変化しました。逆にいえば一体感はなくなった、5声がバラバラな感じ。

 つまり、バスでサミングしてそれをマスターに流してまた(他のトラックと)サミングするのと、直接マスター入力でサミングするのとでは、音に違いが出るってことです。一見デジタルだからそんなの同じに思えるが、アルゴリズムもあるだろうから、やはりどの段階でサミングするかで音の微妙な質感が変わってしまう。
 アナログミキサーのサミングで変わってくるのは当然でしょうが、まさかデジタルでもはっきり違いが出るとは思いませんでした。他のDAWでも差異は出ると思います(各DAWごとに癖がありそう)。

 そしてバスコンプを使わなくても、バスに通すだけである程度の“一体感”は出るってことが、この比較で判明した。

 ウチはまだ使ってないが、アナログのサミングをエミュレートするプラグインもありますが、今後の検討課題。
 ただ、ProToolsを使うようになって、あまりにマンガチックに「色」がつくようなプラグインは、使わなくなった。音の透明度が高いから、ああ色付きのやつ使ったね……ってはっきりわかるから。原音やら録り音で勝負したくなってくる。

 とすると次の段階はハードだけど、ウチはまだそこまでは到底無理。💧 ボーカルの録り音はシンガーさんの環境次第、って事情もある。
 まあとにかく、初期モータウンやブルーノートに倣って、今の環境でできる最大限+αのことを、アイディア&工夫でやっていきます。

2024/11/18

11/18 新曲「オールドソングス」/ Tombo

 いま、ただひとつの想いを伝えたくて――。CARPENTERSに捧ぐ 

「オールドソングス」/ Tombo

 作詞:弦央昭良
 作曲:弦央昭良
 編曲:弦央昭良

Release Date:2024/11/18
JASRAC作品コード:307-0643-2


#AOR #エレクトロポップス #POPS

2024/11/14

パッピオ(パピプペ親父)の秘密

  パピプペ親父とは、TOMITAシンセサイザーサウンドに欠かせない(?)、パ行の音でしか歌わない音色(パッチング)のことである。元祖ボーカロイドといえるかもしれない。実際聞いてみると、見事に中年男性の歌声になっている。初めて聞いた人も絶対忘れないだろう印象的な音だ。
 冨田先生がライナーノーツに書いていた話によると、実はこれ、手塚治虫の漫画に出てくるヒョウタンツギのイメージなんだそうですね。
 まあそれで、誰が呼んだかパピプペ親父という名前になったらしいけど、個人的はいくらなんでももう少し名前を何とかしてあげたい、と思ってた。
 組曲「惑星」の「木星」を聞くと、結構“いい声”でオペラっぽくテノール歌唱しているので、イタリア風に崩してパッピオ、あるいはパッピーオと呼称したい。

 ここから本題ですが、実はこのパッピオの再現は、基本的なシンセサイザーでもできたりします。VCOはノコギリ波、VCFはレゾナンスを上げ気味にして、あとはCUTOFFをいじれば、パピプペ……という感じになります。
 案外難しいのが、アナログシンセなのでこのCUTOFFの調整で、音符に合わせて手動で適切な位置に変更しないと、きれいにパ行の発音はしません。これ結構職人技がいる部分だったりします。

 ……ところが、少し前書いた冨田先生と松武秀樹さんが出演されていた番組の話。ここで、この音をmoogで作る箇所があったのですが、箪笥の様子を見ると、手弾きなのになぜかシーケンサーが動いていたんですね。もちろんアナログのステップタイプのやつです。
 キーボードを弾くたびにワンステップづつ動くシーケンス。そして音的には非常に美麗に「パピプペポ……」と繰り返しています。ここでピンときたんですが、このシーケンサーでCUTOFFのCV電圧を出していたのです。それで手動でやるより遙かにキレイにパピプペ音が出ていたという訳です。
 これまで見たシンセパッチの解説にはそんなことはどこにも書いてなかった。これが美しいパ行の発音の秘密だったんですね。達人の作業は見ているだけで勉強になるわけです。シーケンサーにこんな使い方があるとは目から鱗でした。やはり奥深いアナログシンセ道。

2024/11/11

11/18 配信予定「オールドソングス」/ Tombo

 いま、ただひとつの想いを伝えたくて――。CARPENTERSに捧ぐ

 作詞:弦央昭良
 作曲:弦央昭良
 編曲:弦央昭良

JASRAC作品コード:307-0643-2

#AOR #アンビエント #シンセポップ

2024/11/08

マスタリング用リミッター考

  ウチはマスタリングといっても、夢がなくてスマンが、毎回IZotope Ozoneで統一しています。
 というのは、マスタリングは最終(微)調整の工程と位置づけているので、ミックスの段階で音質などの方向性はすべて仕上げていて、あとマスタリングはEQやマキシマイザで処理するくらいに留めています。ミックスに問題があれば戻って対応できるので、むしろマスターでゴチャゴチャやらない方がいい結果が出るんですね。
 で、作業のスピードアップを図るためもあって、もっとも癖がないと思われるOzoneで仕上げている訳。この工程は透明であった方がいいわけです。

 ただ今回、オールディーズにリスペクトした曲をマスタリングしていて、いつものOzoneマキシマイザーでは雰囲気が合わないことが判明した。バラードなので音圧操作は特に不自然さが出る。聞く人が聞けば不自然さバリバリです。

 そこで試行錯誤の結果、Ozoneで初めてVintage Limiterを使ってみたんですね。音圧はそれほど出ないけど、その分自然でいい感じに持ち上げてくれました。こんなのオマケだろうと思っていたら、結構ちゃんとしてた。
 しかもマキシマイザーの方と結果を比べると結構衝撃で、マキシは変なタイミングでウネウネと音圧上げ処理しているようです。厳密にいえばトラックのダイナミクスが不自然に変更されちゃってる。今後はリミッターも使っていった方がいいかと思った次第。

 リミッターがいいとわかると、途端に他も試してみたくなるのが人情ってもので、久々にWaves L2も試したが、なんだか全体的にWaves色に染まってしまって、今回は敬遠。
 更に調子に乗って、SonnoxのOxford Limiterを購入。これもABILITY/SSWで昔使っていたので使用感はわかる。
 今回ProToolsで試してみたら、やはり自然に音圧感が出てよかったが、なかなかにブリティッシュな仕上がりになってしまい、残念ながら曲調に合わなかった。アメリカのオールディースをリスペクトした曲なので。
 OzoneのLimiterと比較すると、面白いことに確かにそっちはアメリカンなんですね。
 プラグインにもお国柄で出るようで、なかなか面白い。

 以前より音圧が求められなくなってきているので、マキシマイザーよりリミッターも使っていったほうがいいかもしれない。そうすると、EQも組み合わせを考えたいが、今回はOzoneのEQで間に合わせた。

2024/11/04

スムースAORのアルバム

  ずっと追い続けているアーティストさんがいて、新作アルバムが出たので聴いてみた。これが、びっくりするくらい良い出来。強烈な音圧とドンシャリで耳を破壊するイマドキ音楽の対極をゆく、穏やかな伴奏の流れにボーカルが浮かび上がるような、スムースAORとでもいうべき作品でした。

 このアルバムで提示された独特の歌唱法に、最初は、なぜこんな不安定な歌唱をするのだろうと思った。ところが通して聞くと、これが意図だとわかる仕掛け。
 ミックスボイスからファルセットへゆるりと切り替えると、声が不安定に裏返ったりしますが、それにより浮遊感や官能性を醸し出す。非常に微妙なバランスで成立してました(というかさせていた)。良いテイクが録れるまで苦労しているかも……。

 全曲書下ろしの心象スケッチのような、静かだが印象的な良作でした。英国新進プレイヤーのサックスも、非常に効果的に楽曲の中に溶け込んでいます。ちょっとBジョエル「素顔のままで」を思い出した。
 このアーティストさん、オリジナルアルバムはもう30枚近いんだけど、まだこんな新しいことにチャレンジされるとは……。ウェザーリポートだってそんなには続いていない。😓 いやー嬉しい驚きでした。

 たぶんメジャーではこのコンセプトは通用しない。これはちゃんと聴いてくれるファンがいるインディーズだからこそ。マスタリングは英国有名スタジオの高品質マスターで自作ミックスも良い。アルバム単位での音楽表現、まさにAOR(Album Oriented Rock)。
 こんなにも尖った方だったとは……ひとつの境地ですよこれは。密かに最大限のリスペクトを贈りたい。弦央も気合いが入ったよ。

11/18 新曲「オールドソングス」/ Tombo

  いま、ただひとつの想いを伝えたくて――。CARPENTERSに捧ぐ  「オールドソングス」/ Tombo  作詞:弦央昭良  作曲:弦央昭良  編曲:弦央昭良 Release Date:2024/11/18 JASRAC作品コード:307-0643-2...