ラジオで聞いた面白い話。ジャズ評論家の後藤雅洋氏によると、世界屈指といっていいジャズレーベル、アメリカの「BLUE NOTE」ですが、始めの頃は本当に中小企業のような感じで、レコードの刷り枚数も初回500枚とか1000枚だったらしい。レーベル設立者はA・ライオンというユダヤ系ドイツ人の移民で、移民だからこそアメリカのジャズを「外」からの視線で芸術として評価できた。(米国内ではあまりに身近なので正しい評価が難しかった)
あと、BLUENOTEのアルバムは、プロデューサーでもあったライオンの考えで、実は非常に作りこまれた「完成品」であった。コンセプトに沿って何度もリハーサルし、アドリブも練りこんでから本番の録音をしていたらしい。実例の曲が流れていましたが、そういえばミスもないし非常に流麗にプレイしている。ある意味ジャズの生っぽさからはちょっと離れているんですね。
ライオンは、リハにもミュージシャンにギャラを払うという徹底っぷりで、自分のプロデュースを貫いていた。また著名なレコーディング・エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーに指示して、徹底してミドルの音域を強調した音作りをした。それは当時の黒人家庭は裕福でなく小さなスピーカーしかなかったため、それに合わせたとのこと。
後藤氏が例としてバド・パウエルの曲を流したあと、「ほら、これってホントのところ実際のピアノの音からかけ離れているでしょ?」と言われたのは衝撃でした(w)。まあ確かにそう。だから当時の曲を今聞くとややストレンジなのは、モノラルとかレコーディング機材のせいばかりでもなく、極端な音作りの結果ということもあるらしい。ただ、“作った”ウッドベースの音もそうだけど、名盤の数々がこういう音で録音されてしまったので、それがジャズのスタンダードになってしまった面もあるとのこと。
また移民から見たジャズなので、音の“黒人音楽っぽさ”も強調していた。
もともとライオンはジャズマニアだったそうですが、完成品を作ってしまうあたり、完璧主義のドイツ人といえばドイツ人らしい。
逆に超放任主義のレーベルもあったそうですが、この話はまた次回。
季節の変わり目、皆様どうかお身体はお大事になさって下さい。(個人的には早く花粉の季節が終わって欲しい…)