2020/08/04

意外なジャンルの意外な楽器

 作曲家、ことに打ち込みで全ての演奏まで作っている人間からすると、特定楽器の音源起用というのは一種の用兵論みたいなところもあって、まあ起用しただけではダメでアレンジしないといけないが(w)、曲全体を俯瞰して、これを使ってこんなアレンジにするか~みたいなところは、取り掛かる前に色々と考えるわけです。実際にちょっとフレーズ作ってみて、こりゃダメだな変更しよう、ってことも勿論ありますし。

 といっても、ポップミュージックである以上、あまりに奇抜なアレンジ(楽器の起用)はできないわけで、そこは前衛芸術ではないので、リスナーのことも考えないといけません(その前にクライアントさんがこんなの求めてないだろうな、ってことはわかるはず)。色々なジャンルの音楽がありますが、各ジャンルでスタンダードな楽器編成やアレンジってのもあるわけで、それがジャンルの構成要素である以上、それを尊重するのは当然ですね。
(まあちょっと冒険してもいい、って時も有難いことにありますが…)

 例えば、日本ではほぼ最近まで忘れ去られていて、その逆に欧米ではギター並みにずっと使われている楽器、それはボタンが一杯付いている(鍵盤付きもある)精密機械のような楽器――アコーディオンですが。こいつはなかなか現代日本では目立つ場所で見かけることがありません。シャンソンやラテン系音楽などで使われていることがある他は、一部のグループで使われている位、なのですが。
 実は、ずっとポップミュージックのメインストリームに近いところで、頻繁に使われているジャンルがあるんですね、これが。なんだと思いますか?

 ほとんどの方が意外と思われるでしょうが、それは「演歌」です。そうなんですよ、ガットギターやストリングス使用はよく知られているでしょうが、その次くらいの頻度でアレンジに入ってくるのがアコーディオンだったりします。面白いですね。多くの人が、実際耳にして音は知っていてもそれと気付いてない可能性が高いと思います。非常にきれいなオルガンのような音です。演歌の生演奏ライブも少なくなったので、実際演奏を見る機会もそんなにありませんしね。

 で、まあジャンルの定番楽器だけに、演歌のアレンジでアコーディオンを入れても全然違和感ない、というか大歓迎みたいな雰囲気が、リスナーさんにもクライアントさんにもある。他のジャンルだったら大冒険になってしまうんでしょうが、演歌は違うんですね。結構他の生楽器もアレンジにガンガン入ってきます、それが演歌のフォーマットなので。自分なんかはこういうのも高品質な打ち込み音源で再現していますが。

 ここで有言実行、実例を紹介しますね。
 アレンジにアコーディオンを入れた曲が、昨年発売のヒカリ真王子(まおじ)さんのCD「女ごころ」という曲になります。


 作詞作曲は「あいたかし」さん、この曲はカバーで、弦央昭良が編曲・ミックス・マスタリングを担当させて頂きました。もし機会がありましたら一度どこかで是非。どの音がアコーディオンか当ててみてください。

(アコーディオンという楽器は面白くて、昔は日本でも大流行したり、本当によく使われていたんですね。RolandのV-Accordionを待たずとも、電子化もされていて、’70年代にはトンボ楽器が電子アコーディオンを作っていたようです。同じ頃KORGも電子アコーディオンを出しているはず。面白い展開でした)

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