1960~70年代のアメリカを舞台に、新人黒人女性コーラスグループ三人組が、若いプロデューサーと二人三脚で、スターダムまで登りつめていくまでを描いた話。ダイアナ・ロスの自伝が元になっており、グループはシュープリームス、プロデューサーが立ち上げるレーベルはモータウンをモデルにしているそう。アメリカの音楽業界の様子が垣間見えて、この前書いた「イエスタディ」と同様、なかなか面白かったです。
ただ、ミュージカル仕立てなのですが、題材が題材だけに出てくる曲が全部R&Bで、最初のうちこそ「本物」サウンドでノリノリでしたが、途中で急にウザくなってきます(笑)。それは、劇中でプロデューサーが言う通り、白人リスナーにウケるために、黒人音楽色を抑えてそっち方面におもねるような曲に方向転換したからで(「売るためには仕方ない」そう)、ブロードウェイのミュージカルでありがちな曲ばかりになってしまい、音楽的にはちょっと退屈だった。(極言すればあのテの曲は歌詞以外、本質的には似ているものが多い。もちろん素晴らしい作品も多いが)
だから、前半の60年代の部分が音楽の多様性があって一番面白かった。(ファッションもコスプレみたいでwキマっていた)
レコーディング風景も、最初レーベルのスタジオは手作り感満載で、ミキサーもポータブルの8chだが、グループが売れてレーベルも大きくなると、24chはありそうな最新コンソール、モニター環境になっていく。(もちろん70年代だからまだ録音はテープ)このあたりもリアルで面白い。
最初のスタジオは、プロデューサーが経営していた中古車販売会社の倉庫を改造したもの。資金は閉店セールで一挙に在庫を売り切って作り、それを賭博で増やした……ってのはちょっと都合良すぎる気が(実際、そうでもしないと立ち上げ資金は賄えない、という点はリアルだが)。
グループ三人組の移り変わる人間模様や、純粋だったプロデューサーが、昔自分たちがされた汚いテも平気で使うようになっていく、なんてところが見所か。
マービン・ゲイやジェームス・ブラウンを思わせる(合体?)歌手や、ほぼジャクソン5も出てきます(笑)。
デトロイトが舞台なので、60年代の大暴動や、マーチン・ルーサー・キングの公民権運動にも触れられています。黒人の地位向上にも音楽は大きな役割を果たしたわけですね。
(そしてこの後デトロイトが没落していくのは日本車が原因なんだから、日本人としてはちょっと複雑。余談ながらwikipediaによると、現在のモータウンは永らく活動停止中らしく、レーベルごと転売を繰り返されているようです)
(おまけ:今ググったら元はブロードウェイミュージカルの映画化だそうで、そのテの曲が多いはずですわ)