ラジオで聞いたモーツァルトの面白い話。幼い頃から神童として各国で知られていたのは、父親が幼い姉とともに演奏旅行でヨーロッパ中を連れまわしたからなのですね。モーツァルトの生まれた宗教国家ザルツブルグは、現在のドイツのあたりで(まだ統一ドイツはない)、それでも周辺で一番強力な国だった。そして宗教国家(カトリック)の方針として、神童=神の奇跡であり、それは広く世界に示されなければならない、という使命があったらしく、それで旅の許可が出ていた。
この演奏旅行というのが、実は半分くらいは見世物興行といって良いものだったらしく(w)、幼い姉弟に目隠しして楽器を弾かせたり、初見の楽譜を一瞬だけ見せて演奏させたりと、ちょっと大道芸に近いものでもあった。モーツァルトの姉も実は大変な才能だったが、むろん当時は女性が作曲家になるなど考えられなかったから、ある時期からは花嫁修業に専念したらしい。
父親というのがなかなか山師的だったというべきか、子供の才能を利用して隙あらばどこか有力な国で仕官の道を探ったりということもあった。
無論それだけではなく、モーツァルトを各地の有力音楽家に会わせ、あるいは学ばせて、どんどん音楽家としての力に磨きを掛けていった。一種の留学としての意味もあった、とのこと。
この演奏旅行、当時は馬車での長時間移動でずいぶんハードな生活だったらしいけど、それでも姉弟はそれに耐えてやりきった。
だから、モーツァルトが天才だったのは事実だけど、こうした父親のスパルタ英才教育もあって才能を開花させていった、ということらしい。(幼い頃から人前で演奏していたら、今でいうストリートライブ出身みたいなもんで、度胸や勘が自然とついたでしょう)
で、8歳で交響曲を書く、という驚くべきことを成し遂げているわけですね。
それにしても(その後を見ても)、名声の割りになかなか楽な人生とは言い難いようです。生まれてから死ぬまで同じ街を出なかったバッハが、当時の偉人としては一番幸せだったかもしれません。