2020/05/30

カーペンターズ「遥かなる影」を聴く

 今回はカーペンターズのオリジナルアルバムを徐々に聞いていくシリーズ、第何回目だっけ。そろそろいくかと、大ヒット作「遥かなる影」を聞きました。

 到底2作目とは信じられない出来、もうこの時点で彼らの音楽は完成していたんですね。原点とかそういうんじゃなく、もうグループとしての音楽性が高いレベルに到達してる、固まってきてる。恐るべき新人だったといえるでしょう。
 有名な話だけど、アレンジは全てリチャード・カーペンターがやっていた。これはA&Mレーベルオーナーのハーブ・アルパートが許可を出したから。こんなのは前代未聞でしょう。

 そのアレンジだけど、当時斬新だったと思うけど、クラシカルな楽器、オーボエやフルートなども取り入れ、アコースティックでありながらポップな、そして重厚でゴージャスな世界を作り出すことに成功しています。もちろん弦や管も入れています。みんなが思い浮かべるカーペンターズ・サウンドですね。
 また、カレンの声質に合わせて、エレピは当時一般的だったフェンダーローズではなく、ドイツ製のウーリッツァーを使用、渋い色彩感を醸し出しています。曲によってリチャードは生ピアノも演奏。
 アコ楽器を大フィーチャーしているだけに、非常に美しい音楽的ダイナミクスがあって、ぶっちゃけ耳が全く疲れない。やっぱり音圧戦争は害悪でしかなかったのではないか。

 今の曲と当時の曲でかなり違うなあと感じるのは、コーラスワークの存在感ですね。これはカーペンターズだけではないけど、当時はかなり多声コーラスを楽曲の随所に取り入れていた。もうマルチトラック録音が一般的だったので、カレンとリチャードが多重録音でコーラスまでやってしまう。
 今はここまでがっつりとは入れない曲が多い。このあたりは流行り廃りかもしれませんが。

 ベストトラックはやっぱり「遥かなる影」かなあ。あとカヴァーだけど「ラブ・イズ・サレンダー」も良かった。逆にワーストはビートルズカバーの「ヘルプ」(笑)。だって曲調が似合わないんだもん。
(その「遥かなる影」で、リチャードが落ちサビあたりで少しピアノをミスるんだけど、このテイクがそのまま採用されています。これはもちろん他の演奏が良かったからでしょう)

 アルバム最後の「アナザーソング」は事実上インストだけど、これは元々インスト出身の兄妹の面目躍如。ドラムは当然カレンでしょう(Wikipediaで確認、カレンでした)。なんと楽器同士のバトルまであります、これは必聴だなあ。この曲を入れたのは二人の意地かもね。カレンという人は、なんとドラムが本業でボーカルは片手間だったんですからね、元々は。

 この作品で全米1位の大ヒットを記録するんだけど、そりゃそうだよな、って納得の内容でした。アメリカンポップスのひとつの雛形を作り上げたともいえる、非常な良作でした、まあ今更ではありますが。

(「アナザーソング」ですが、英語版Wikipediaに、ヘンデルの「メサイア」のコード進行を取り入れている、と書いてある(!))

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