2020/02/05

秋吉敏子さんの心構え

 この前深夜にTVをつけたらETVで「SWITHインタビュー達人達」という対談番組をやっていて、この回のゲストがなんとジャズピアニストの秋吉敏子さんと、女優の松坂慶子さん。
 秋吉敏子さんといえば、業界最長老のゴッドマザーにして、文字通り音楽界の生きるレジェンドですが(なんと御年90歳)、全然見えないしまだアメリカでバリバリの現役、番組でもピアノを弾いておられましたが、全く衰えがないですね~。
 そして松坂慶子さんがまたお綺麗でして、ご主人はジャズミュージシャンですから、そしてやっぱりお綺麗ですし(しつこいw)これは良い番組が見られました。って言っても全部見られなかったけど、秋吉さんがすごく印象的なことを言っておられて。

 番組は、まず松坂さんがニューヨークのSOHO地区にある秋吉さんのご自宅を訪問するところから始まりました。
 ここで秋吉さんが言っておられたのは、自分は(音楽家として)まだまだだと思っている、でも今日よりは明日は1日分進化しているから、1日1日良いミュージシャンになっている、ということだったんですね。自分はまだまだ、と思うからこそやっていける、慢心してしまったらそこで終り、まだまだだからこそもっと腕を磨こうと生きていける、とおっしゃる。現役音楽家として70年にも及ぶプロ生活を過ごしてきた方がこうなんだから、これは僕らは絶対見習わないといけないことなんでしょうね。
 それでも、やはり年齢のことがあるから、1日寝てばかりという日もあるそうですが。歳をとっても、それだけ経験を積めばより良いミュージシャンになっていけるはず、ということです。凄いなぁ~。

 秋吉敏子さん、アメリカでのデビューが1953年なんですね。もう驚くなかれですよ、昭和53年じゃないよ(笑)、ガチガチのモダンジャズ全盛期、普段うんちく三昧のジャズマニアがぶっ倒れるよ。
 戦後、九州のジャズクラブで演奏をはじめて、その後東京へゆき、そこで来日したあのオスカー・ピーターソンに見出され、渡米してレコードデビュー。
 当時、向こうのTVに出てたときのビデオが流れてましたが(よく残ってたな)、着物を着てクイズ番組に出演、この日本から来たお嬢さんの職業は何でしょう、みたいなやつ。正解後、スタジオでピアノトリオ演奏するわけです。こういうのは嫌う人は嫌うかもしれませんが、秋吉さんは宣伝になると思ってどんどん出演したらしい。実際それで結構名が売れたそう。そのあたりは流石にショーマンシップ溢れるジャズメンって感じですか。
 ご主人はサックス&フルート奏者のルー・タバキンだし、秋吉・ルーの双頭ビッグバンドじゃ、そりゃお客来ますよ。二人いっぺんに見られる上にビッグバンド、一粒で三度おいしい状態だし。
 うーん、このあたりで時間切れで全部見られなかったのよ、残念。

 以下はおまけ。秋吉さんといえば、「ジャズと生きる」という自叙伝がありますが、この中の渡米後初日夜のエピソードがなかなか衝撃です。知り合いのジャズメンに連れられて、ジャズクラブに行った。演奏していたのはなんと帝王マイルス・デイビス。ビバップばりばりの頃でっせ、1953年なので。
 そしたらマイルスが「一緒に演るか」とゲストに誘ってくれた。ところが緊張とパニックのあまり「NO!」と言ってしまった(笑)。
 その夜のマイルスは「おれって本当は…嫌われているのかな…」などとカウンターで俯いて独りバーボンをあおっていたという。いやそれは嘘ですが。
 怖い怖い、アメリカでデビューするってこういうことなんだよなあ、と。その後、マイルスとは無事共演したそうですが。

 もうこのまま10年でも20年でも現役でいて頂きたい、日本が誇る世界の秋吉敏子さんのお話でした。

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