今回はミックスを改良した話。
生楽器の音が非常によく録れているアルバムを聞いていて(演奏も良かった)、ふと自分のミックスが心配になって、この前書いた曲を聞きなおしてみた。
するとまあ、こうして比べると低域スカスカのかなり不自然な音に聞こえて、ベースやバスドラがどうこうより、曲全体の空気感が変という感じ。意外とこういうのは気付かないんですね、特にミックス作業の直後は。
思い当たるところがあって、今回は各トラックの低域をかなりバッサリとEQで削っていて、たぶんそのせいじゃないかと思えた。
アナライザーで見ても全く信号がない音域なので、いいかと思って。このあたりの音は、目立たないのにエネルギーだけは高いので、うまく処理しないと最終的に音の透明感に影響したり、音圧が上がらなかったります。
ところが、これが削りすぎるとやはり良くなかったようですね。
そこでミックスに戻って、削りすぎていたところを戻して、ベースやバスドラも50Hzくらいから下はバッサリいったり、重なっているところはえぐったりしてたので、そのあたりも適宜戻した。あとストラトのエコーが深すぎ他、若干微調整。
こうして作った新しい2mixに、前と同じ設定のマスターを通して作ったのが、以下のファイルです。
諸般の事情でmp3ですが320kですし、良いヘッドフォンで聞けば、違いは結構わかると思います。イントロのところが一番分かりやすいと思う。
元ファイル「キミの彼氏はアコーディオン」(若干改良済)
低域EQを修正
面白いことに、低域をバッサリ削った元のやつのほうが、やはり音圧は上がってるんですね、セオリー通り。ただその分前述のように不自然な感じになるので、やはり(音圧上げだけが目的でないなら)低域の極端なカットは禁物のようです。
(音圧の差は、冒頭のアコーディオンの「鳴り」を聞いて頂ければ、明白ですね)
参考までに、今回のマスタリング処理で、使用しているプラグインチェインは以下の通りです。
(1)Waves API2500 Compressor
(2)PSP E27 Equalizer
(3)PSP Xenon Limiter
(1)で2mixをまとめつつ若干レベル上げ。
(2)でコンプ処理で失われがちな高域を持ち上げる。
(3)でいよいよ音圧上げ処理。
API2500は結構はっきりとキャラのつくタイプのコンプで、アメリカンな明るい音になります(悪くいえばチャラい音?)。
E27も実機のモデリングだそうですが、実機にはトランスが入っているそうで、独特のヌラヌラした音になります。非常に面白い。
Xenonはオリジナル設計だけど、これまたアナログっぽいイイ感じの歪み成分が付与される感じ、これまた個性的なリミッターです。
こいつらを通すと、もうDAWで完結しているとは思えないような、アナログ感満載の音になります、お聞き頂いたとおり。こういうところがマスタリングの面白さだったりします。
で、今回はシンセベース(を、ベースアンプに通してある)とブレイク系の打ち込みドラムのリズムセクションだったので、こういう感じの少し暖かい歪み成分があるマスタリングにしてみましたが(インディーズ風?)、この前買ったWavesのAbbey Road TG Mastering Chainも、せっかくなので試してみました。
名前の通り、ロンドンのアビーロードスタジオが監修して作られたプラグインです。同シリーズは非常に高品質のプロダクト揃い。
マスタリングをこいつだけでやってみたのが、以下のファイル。いかがでしょうか? 設定としては前述のやつと似た感じにしたのですが、これは同じ音圧が出ているのにかなり透明感がある仕上がり、しかもアナログっぽいし、ちょっと市販のCDにも近づいた音です。(高域だけは上げすぎてたので若干絞った)
TG Mastering Chainで処理
かなり優秀だと思いますわ、なかなか使えるやつだと思います。
ミックスは油断してるとこういうことがあるから、常に気をつけていないといかんですね。
(おっ、でも今聞いたら、コンプを1段抜かした分、2mixのまとまりがなくなってる気がする。こういうの、無限にあるんですよミックス作業はw)